
2025.04.16
【2025年】医療DX推進体制整備加算とは?電子カルテ導入の必要性と算定要件を解説
医療DX(デジタルトランスフォーメーション)」とは、医療分野においてデジタル技術やITインフラを活用し、医療サービスの質と効率の向上を目指す取り組みです。マイナ保険証やオンライン診療の普及により、以前よりも医療のDX化が進んでいますが、まだ電子カルテなどを導入できていないクリニックもあるのが現状です。今後、厚生労働省が目指す医療DXには以下のものがあります。
- 電子カルテの全国普及
- 電子処方箋の導入
- 医療機関間の情報共有(地域医療連携)
こうした背景を踏まえ、2025年4月に医療DX推進体制整備加算の制度改定がおこなわれます。とくに、新規開業予定のクリニックや、紙カルテを使っているクリニックは、対応を検討すべきタイミングです。この記事では、2025年4月に改定される医療DX推進体制整備加算の変更点や対策についてくわしく紹介していきます。医療DXの加算を取りたいけど踏み込めないクリニックはぜひ参考にしてください。
2025年改定される医療DX推進体制整備加算とは?
「医療DX推進体制整備加算」とは、医療機関のデジタル化を加速させるための診療報酬の加算で、2024年の診療報酬改定で新設されました。厚生労働省は、全国の医療機関に対し、電子カルテの導入や電子処方箋の活用を推奨しています。
電子カルテに関しては、国が「医療DX令和ビジョン2030」を掲げて全医療機関での導入と、全国医療情報プラットフォームの活用を目指しており、それに向けて加算が改定されました。
クリニックでの電子カルテの導入率は令和5年の時点で55%となっており、国は2030年までに100%を目指しています。
この加算は、オンライン資格確認システムを通じて取得した診療情報や薬剤情報を実際の診療に活用できる体制を整備し、電子処方箋や電子カルテの情報共有サービスを導入することが目的です。
とくに電子処方箋に関しては、導入のメリットが明確でないと感じ、導入を見送っている医療機関が多くなっています。令和6年9月時点でクリニックの導入率が4.5%と伸び悩んでいる状態です。そのため、新たに加算に含めることで電子処方箋の利用率を増やすねらいがあります。
今回の加算では、医療機関の対応状況により段階的に点数が設定されているため、これから導入を考えているクリニックも算定しやすくなっています。2025年の加算の改定に伴い、新たに開業する医師や、今も紙カルテを使い続けているクリニックは対応を検討する必要があるでしょう。
医療DX推進体制整備加算の算定要件と疑義解釈
算定要件の詳細(2025年版)
医療DX推進体制整備加算を算定するためには、電子カルテと関連するシステムの導入が必要です。加算の要件として「電子カルテ情報共有サービスを活用する体制」が求められており、紙カルテのままでは電子カルテ情報共有サービスの利用ができません。医事システムを導入していても、紙カルテのままでは電子カルテ情報共有サービスとの連携が取れず、加算対象外となります。さらに、医療情報の適切な管理やセキュリティ体制の構築も要件の一部となっているため、クリニック内でのシステム対応が必要です。
すぐにシステムの導入が難しい場合は、2025年9月30日までの経過措置があります。それ以降は電子カルテを中心とした体制整備が求められるでしょう。また、この加算を算定するためには、単にシステムを導入するだけでなく、個人情報保護や診療データの安全な管理を含むセキュリティ対策、運用フローの構築も求められます。
疑義解釈の最新情報
医療DX推進体制整備加算に関する最新の疑義解釈が、令和7年2月28日付で厚生労働省から発表されました。以下の点について具体的な指針が示されています。
- 届出済の医療機関の対応
- 電子処方箋の発行体制または電子処方箋管理サービスへの登録体制
- 6歳未満の患者の割合
- マイナ保険証の利用率の算出方法
それぞれ解説していくので確認してみてください。
1.届出済の医療機関の対応
令和7年4月1日以前に医療DX推進体制整備加算の施設基準を届け出ているクリニックは、改正による評価見直しに伴い、以下の対応が必要です。
- 電子処方箋を導入し、加算1~3を算定する場合:新たな様式での届出が必要
- 電子処方箋未導入で、加算4~6を算定する場合:届出の再提出は不要
すでに加算1〜3を算定しているクリニックは改めて届出しないと加算を算定できなくなるため注意が必要です。また、届出済でもマイナ保険証の利用率が加算1〜6に満たない場合は再度届出する必要がなく、算定もできなくなります。
2.電子処方箋の発行体制または電子処方箋管理サービスへの登録体制
院外処方をおこなうクリニックでは、電子処方箋の発行や、引換番号が印字された紙の処方箋の発行と処方情報の登録が求められます。一方、院内処方の場合は調剤した薬剤の情報を電子処方箋管理サービスに登録する体制が必要となります。
また、電子処方箋管理サービスを利用するには、医師がHPKIカードを事前に申請しておく必要があり注意が必要です。
3.6歳未満の患者の割合について
令和6年1月1日~12月31日の延べ外来患者数のうち、6歳未満の患者割合が3割以上の医療機関は、令和7年4月1日~9月30日までの間、マイナ保険証利用率実績の要件を「15%以上」ではなく「12%以上」とできます。つまり、小児患者が多いクリニックでは、マイナ保険証の利用率の基準が軽減される仕組みです。
4.マイナ保険証の利用率の算出方法
医療DX推進体制整備加算の施設基準を満たす場合、過去3か月間で最も高い「レセプト件数ベースマイナ保険証利用率」を用いて算定が可能です。
また、マイナ保険証利用率を計算する期間が選べます。たとえば、令和7年4月分の加算算定におけるマイナ保険証利用率は、以下のように選択できます。
- 同年1月のレセプト件数ベースマイナ保険証利用率
- 令和6年11月または12月の利用率
利用率に関しては、クリニックにとって都合のいい方を選択しましょう。
医療DXへの対応が必要な理由
医療DXへの対応は重要視されており、「医療DX令和ビジョン2030」という国による医療のデジタル化推進策をもとにすすめられています。国は2030年度までに、ほぼすべての医療機関へ電子カルテを導入することが目標です。そのため、まだ電子カルテを導入していないクリニックに対しては、標準型電子カルテの導入をうながしています。医療DXはIT導入だけではなく「医療提供体制の質と効率の向上」が可能です。
とくに厚生労働省が主導する医療DXでは、電子カルテや電子処方箋の導入により、患者さんの利便性を高め、医療従事者の業務を軽減することを目指しています。
紙カルテ中心の診療体制では、情報共有や記録の正確性に限界があり、診療の質にも影響を及ぼす可能性があります。今回の医療DX推進体制整備加算の改定により、新規開業予定のクリニックや既存のクリニックでも、一定水準のDX対応が欠かせなくなるでしょう。
今後の診療報酬や患者対応にも直結することを考えれば、早めの対応がクリニック運営の鍵となります。
電子処方箋の必要性
電子処方箋の導入は、医療DX推進体制整備加算の評価に直結し、加算の点数にも影響します。また、導入により医療の質と効率を高められるでしょう。電子カルテと連携した電子処方箋の活用により以下のメリットがあります。
- 患者さんの薬歴管理や過去の処方内容がわかる
- 薬剤の重複投与や禁忌薬の使用リスクを防ぐ
処方の際に医薬品情報を参照しながら判断できれば、薬剤の重複投与を防いだり、禁忌薬の確認ができたりします。確かに、医事システムだけでも最低限の対応は可能です。しかし、紙カルテのままでは医療DX推進体制整備加算を算定できません。そのため、今回の加算を算定したいと考えているクリニックは、電子カルテの導入がおすすめです。
さらに、電子処方箋は在宅医療でも活用できます。電子処方箋を利用すれば、訪問診療で処方する際、紙の処方箋のやり取りが不要となります。薬剤配送サービスのある薬局を利用すれば、患者さんは外出することなく薬剤を受け取ることも可能です。
電子カルテ導入の重要性と対応策
電子カルテを導入して電子カルテ情報共有サービスを活用する体制を整えることは「医療DX推進体制整備加算」の取得条件となっているため、これを満たさなければ算定できません。
紙カルテのクリニックは必然的に加算を算定できないため、新規開業を目指す医師や既存の紙カルテを使用するクリニックにとっては大きな転換点となるでしょう。このまま電子カルテの導入を見送ると、加算を算定できずに収益の減少にもつながります。
この流れに乗り遅れないためにも、対応策として、電子カルテの導入計画を立て、必要なインフラや人材の整備を進めておくことが重要です。電子カルテは記録するためだけのツールではなく、クリニック経営の安定と発展につながるでしょう。
クリニックでの紙カルテから電子カルテ移行必要?注意点や成功の秘訣も解説
まとめ:医療DXの未来に向けて
2025年の制度改定により、医療DX推進体制整備加算を算定するには電子カルテを導入してサービスの登録をすることが必須となります。
新規開業予定のドクターや紙カルテを使用しているクリニックは、この機会に電子カルテや電子処方箋の導入を検討しましょう。このタイミングで電子カルテの移行に踏み切れないクリニックは、医療DXの流れに取り残される可能性があります。
今後、電子カルテは記録や加算対策ではなく、診療効率の向上や薬歴管理の迅速化、患者サービスの質の向上にもかかわる重要なツールとなります。医療現場では、デジタル技術を活用した体制整備が求められるため、早めの準備と対応が欠かせないでしょう。
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