2024.04.03
医療DX令和ビジョン2030とは?掲げられた背景や目的について解説します
医療DX令和ビジョン2030が提言され「医療DX令和ビジョン2030とは何か」「何をいつまでに導入すればよいのか」と、悩まれているクリニックも多いのではないでしょうか。本記事では、医療DX令和ビジョン2030が掲げられた背景や、目指すところなどについて詳しく解説しています。医療DX令和ビジョン2030の情報を探している方は、ぜひ最後までご覧ください。
(※本記事は2024年4月時点の情報です)
「医療DX令和ビジョン2023」って何?
医療DX令和ビジョン2023の3つの骨格
1.全国医療情報プラットフォーム
2.電子カルテ情報の標準化
3.診療報酬改定DX
医療DX令和ビジョン2030が掲げられた背景
少子高齢化が進む中で質の高い医療を提供する
新型コロナウイルス感染症の流行で浮かび上がった課題
医療DX令和ビジョン2030が目指すところ
患者が保健・医療情報にアクセス可能な仕組み
新たな感染症の流行に備えた対策
関連分野の産業振興・人材活用
医療のデジタル化は確実に進む
「医療DX令和ビジョン2030」って何?
「医療DX令和ビジョン2030」とは、2022年5月に自由民主党政務調査会によって提言された施策です。医療の質の向上と国民の健康増進を目的として、定められました。
医療DX令和ビジョン2030が提言された理由として、医療はデジタル化が遅れている分野であることが挙げられます。総務省の調査によると、医療・福祉分野はデジタル化を「実施していない、今後も予定なし」の回答が約8割となり、全分野の中で最も多い結果となりました(※)。
医療分野における「情報」の在り方を根本的に解決するために、医療DX令和ビジョン2030が掲げられたのです。
※参考:総務省|情報通信白書令和3年版 我が国におけるデジタル化の取組状況
医療DX令和ビジョン2030の3つの骨格
医療DX令和ビジョン2030は以下の3点を骨格として掲げています。
- 全国医療情報プラットフォーム
- 電子カルテ情報の標準化・標準型電子カルテの検討
- 診療報酬改定DX
それぞれどのような内容なのか、順番に見ていきましょう。
1.全国医療情報プラットフォーム
全国医療情報プラットフォームとは、医療情報や介護情報をクラウド間で連携し、必要なときに必要な情報を入手できるようにする仕組みです。これにより、マイナンバーカードで受診した患者さんが同意をすると、患者さんの医療情報を医師や薬剤師が共有できるようになります。
共有できる情報の内容など、全国医療情報プラットフォームの詳細については、以下の記事にて詳細に解説しておりますので、こちらをご覧ください。
全国医療情報プラットフォームを利用するクリニックのメリットと注意点
2.電子カルテ情報の標準化
電子カルテ情報の標準化とは、電子カルテの情報や交換方式を標準規格化する取組です。医療機関同士などがスムーズにデータを交換したり、情報を共有したりする目的のもと進められています。
電子カルテ情報の標準化の詳細については、以下の記事にて解説しておりますので、こちらもぜひ参考にしてください。
電子カルテ情報の標準化って何?期待される効果と準備のポイントを解説
3.診療報酬改定DX
2年に1度行われる診療報酬改定において、医療機関ごとのシステムに「共通言語」となるマスタや電子点数表を提供し、医療機関の負担とコスト削減を期待する施策です。2026年度の改定で共通算定モジュールを提供することが予定されています。
診療情報改定DXについては、下記の記事にて詳細に解説しておりますので、こちらもぜひご覧ください。
診療報酬改定DXは何が行われる施策?改定の現状やクリニックのメリットを解説
医療DX令和ビジョン2030が掲げられた背景
医療DX令和ビジョン2030は、以下の背景によって掲げられました。
- 少子高齢化が進む中で質の高い医療の提供
- 新型コロナウイルス感染症の流行で浮かび上がった課題
本章では上記について詳しく解説いたします。
少子高齢化が進む中で質の高い医療を提供する
医療DX令和ビジョン2030が掲げられた背景の一つとして、深刻な日本の少子高齢化が関係しています。少子高齢化が進むことによって医療を必要とする人が増加するのに対し、医療従事者の確保が難しくなるためです。
診療に必要な医療従事者の人数が確保できなければ、医療の質が低下してしまうおそれもあります。2023年9月における高齢化率は29.1%と、過去最高です。一方で、1970年の出生数は約200万人であったのに対し、2019年は約85万人と40年間で半分以下にまで落ち込んでいます(※)。
このような状況下で、国民の健康増進と質の高い医療を提供するために、医療のデジタル化を発展させ効率化を求める必要があるのです。
新型コロナウイルス感染症の流行で浮かび上がった課題
医療DX令和ビジョン2030が掲げられた背景として、記憶に新しい新型コロナウイルスの流行も関わっています。もとより、救急外来などでは患者さんの医療情報収集の難しさが課題とされていましたが、新型コロナウイルスの流行によって顕在化しました。
たとえば、新型コロナウイルスに感染し自宅療養していた人が重症化したため、救急車で病院に運ばれたとします。しかし、搬送先の病院はかかりつけではないため、既往歴や飲んでいる薬といった患者さんに関する医療情報がなにひとつありません。
このように、患者さんの医療情報が入手できないため、治療のために搬送先で一から検査しなければならないことが、新たな感染症が流行するという未曾有の事態で医療従事者の負担を増加させました。加えて、このような状況は医療費を圧迫する一因にもなっています。
万が一、次の感染症危機が訪れた際にはこのようなことが起こらぬよう、経験を活かして「医療の見える化」が進められようとしているのです。
医療DX令和ビジョン2030が目指すところ
医療DX令和ビジョン2030が目指すところは以下のとおりです。
- 患者が保健・医療情報にアクセス可能な仕組み
- 新たな感染症の流行に備えた対策
- 関連分野の産業振興・人材活用
具体的な内容について確認してみましょう。
患者が保険・医療情報にアクセス可能な仕組み
医療DX令和ビジョン2030の1つ目の目標は、患者自身が保健・医療情報に簡単にアクセスできる導線づくりです。患者が自身の医療情報等を活用することで、さらなる健康寿命の伸びが期待できます。
加えて、かかりつけ医以外の医療機関であっても医療情報が確認できるため、効率的に医療が提供できる場合も。これまでは、かかりつけの医療機関に紹介状を書いてもらったり、カルテ開示を行ったりしなければ、患者は自身の医療情報を手にできませんでした。
診療の質の向上や、治療の最適化を進めるためにも、患者自身が医療情報にアクセスできる環境を構築しようと試みているのです。
新たな感染症の流行に備えた対策
医療DX令和ビジョン2030の2つ目の目標は、新たな感染症流行時に迅速に情報を取得できる仕組みづくりの構築です。前述のように、新型コロナウイルスが流行したとき、医療機関は患者の医療情報の取得の難しさと、それによる負担の大きさに悩まされました。
また、新型コロナウイルスに感染した患者自身がスマートフォンで健康状態を入力する「HER-SYS」や、新型コロナウイルス接触確認アプリの「COCOA」など、さまざまなシステムが開発されました。とはいえ、使い勝手が良くなかったり、早期導入が優先されたことから感染症対策の専門家の関与が薄かったりといった課題も残っています。
これらの既存システムを活用しつつ、新たなパンデミックが起こった際には正確な情報が迅速に入手できるよう、医療のデジタル化を進めて対策しているのです。
関連分野の産業振興・人材活用
医療DX令和ビジョン2030の3つ目の目標は、関連分野の産業振興や人材を活用することです。医療DXが進められることによって、創薬や治療法の開発などが加速し、それらの産業が活発化することが期待されています。
加えて、デジタル化によって、SE人材をはじめとした有能な人材が活躍する場が増えるでしょう。医療のデジタル化は、医療面だけでなく産業振興や人材活用の面においても一役買っているのです。
医療のデジタル化は確実に進む
これまではデジタル化が遅れていた医療分野ですが、医療DX令和ビジョン2030によって一気に進むことは間違いないでしょう。医療DX令和ビジョン2030が実現すれば、患者の医療情報が簡単に入手できたり、医療従事者の負担が減ったりというメリットも。一方で、デジタル化に合わせて、クリニックも対策をしなければなりません。
2024年4月現在では情報が限られているため具体的な対策は難しいですが、医療DX令和ビジョン2030を見据えたご相談を受けることは可能です。ご相談は無料なので、デジタル化に不安を感じているクリニックや医師の方は、ぜひお気軽に目利き医ノ助をご利用ください。