2023.07.12
レセプト点検の実態を解説【効率化するならレセプトチェック機能の検討を!】
レセプト請求は医療機関の主な収入源です。小さな算定漏れでも塵も積もれば山となり、経営状態を大きく左右します。「レセプトは経営に関わる大切なもの」と知りながらも「主に事務員がレセプト業務を行っているため具体的な内容や、なにが大変なのかがわからない」と悩みを抱える医師や経営者の方も多いのではないでしょうか。
本記事ではレセプト点検の実態と効率化する方法について解説します。「レセプト業務をスリム化させたい」と考えている方はぜひ最後までご覧ください。
レセプト点検の実態
医療は急速にIT化が進んでいます。レセプトに関しても例外ではありません。社会保険診療報酬支払基金により、「95%を超える医療機関が電子レセプトを用いて請求をしている」という結果が公表されています(※)。しかし、「点検は紙で出力して、人の手で行っている」という医療機関も多くあるのが現状です。ここではレセプト提出までの流れや、レセプト業務の問題点を職業ごとに考えていきます。
社会保険診療報酬支払基金 https://www.ssk.or.jp/smph/tokeijoho/tokeijoho_rezept/tokeijoho_rezept_r04.html
レセプト業務の流れ
レセプト業務は以下の流れで行います。
STEP1 – カルテをもとにレセプトを作成する
STEP2 – 作成したレセプトを点検する
STEP3 – 毎月10日までに前月分のレセプトを審査支払機関に提出する
最も労力を必要とするのは【STEP2】点検作業です。誤った請求は返戻や減額の対象となり、算定漏れがあると病院の収入減につながります。病名開始日に間違いはないか、薬剤処方のための適応病名はあるか、など1ヵ月分のレセプトすべてで数多くの項目をチェックしなければなりません。おのずと月末・月初の仕事量が増え、毎月残業をしてレセプトを完成させているという医療機関も多いのではないでしょうか。
医療機関によって手順は異なりますが、レセプト点検の流れは大きく3つに分けられます。
- 事務員が点検→医師による点検・修正指示→事務員が修正→提出
- 医師が点検・修正指示→事務員が再点検・修正→提出
- 医師がすべての点検を行い修正指示→修正作業のみ事務員→提出
点検内容において医師と事務員に差はなく、基本的には同じ項目を確認します。しかし医師主体で進めるか、事務員主体で進めるかによって労力が異なることも。次章では医師と事務員、それぞれの観点から仕事内容と問題点を考えてみましょう。
医師主体でレセプト点検をする利点と問題点
医師が主体となってレセプト点検をする利点は正確性です。医師は医学的知識があります。また実際に診察をした患者さんのレセプトは感覚的に点検可能です。
一方で問題点は医師の負担が大きすぎること。医師は患者さんを診察するだけでなく、以下のような仕事もあります。
- 医薬品・医療機器の管理や選定
- 学会出席
- 製薬メーカー・医療機器メーカーの対応
- 人員の確保
- 経営改善
多くの仕事を抱えているため、レセプト点検は時間外になりがちです。医師が主体となってレセプト業務を行うと品質を保てますが、負担が大きいのが現実。「可能であればレセプト業務の負荷を軽減したい」と考える医師も少なくないでしょう。
医師主導でレセプト点検を行っている医療機関ではこのような不安があると考えられます。
- 医学的知識がない事務員が正しくレセプトをチェックできているのか
- 複数人の事務員で点検作業を行って統一性はとれているのか
- 自分(医師)以外のレセプトチェックが信用できない
これらを考慮すると、「結局医師である自分がレセプト点検をしたほうが正確だし早い」と思うこともあるでしょう。医師のレセプト業務負担を軽減するためには、医師以外がチェックしても正確性を保つ仕組みが必要です。
事務員主体でレセプト点検をする利点と問題点
事務員が主体となってレセプト点検をする最大の利点は医師の仕事を軽減できることです。患者さんの担当医はひとりですが、事務員は複数人います。分担することで効率的にレセプト業務を行うことが可能です。また、医療事務資格保有者はレセプトについて専門的に勉強しているので、算定要件などの診療報酬に関しては医師より詳しいことも。
しかし、大前提として事務員に医学的知識はありません。医師が記載したカルテを読み解き、数百ページもある薬や検査の資料を確認しつつチェックする必要があります。
受付業務などとは異なり、レセプト点検は知識と経験がないと難しく、「ベテランスタッフに頼りきり」という状況も少なくないでしょう。マニュアル化されていない状態では、ベテランスタッフの急な退職等のイレギュラーが起こると、「点検可能な人がいなくなってしまう」という事態に陥る可能性も。
事務員主体のレセプトチェックは医師の仕事を軽減できる反面、知識と経験が必要不可欠です。
レセプト業務を効率化する方法
レセプト点検は人手によるものだけでなく、「レセプトチェック機能」というシステムが存在します。レセプトチェック機能がどういうものなのか、また導入することでどんなメリット・デメリットがあるのかを解説していきます。
1.レセプトチェック機能とは?
レセプトチェック機能とは、入力されたレセプトデータが正しいかチェックして、自動的にミスや訂正候補を表示してくれるシステムです。
メーカーによって項目の差はありますが、具体的な機能の例はこちら。
- 傷病名が入力されているかどうか
- 診療・処方回数と実日数に相違がないか
- 算定漏れの有無
- 同時算定不可項目の有無
- 投薬・検査・処置・画像診断等に対する適用病名が入力されているか
上記は一例ですが、これらをすべて人の手で確認するとなると、膨大な労力と時間がかかります。しかし、システムを利用すればチェックにかかる時間は一瞬です。
2.レセプトチェック機能のメリット
レセプトチェック機能を導入するメリットは以下の3点です。
- 労力と労働時間を減らせる
- ミスを減らせる
- 品質の向上
人手でイチから行っていた点検作業をシステムに頼れば、短時間でミスや訂正候補を提示してくれます。提示された内容を確認するだけなので、労力は大幅に減るでしょう。それに応じて残業時間も減少するため、結果的に人件費削減にもつながります。
人手で行う点検作業にはミスがつきものです。しかし、レセプトチェック機能を利用することで、見落としなどのヒューマンエラーは最低限にできます。また、システムによって点検方法が統一されるので、点検者による精度のバラつきが解消可能です。レセプトの完成度が高まるだけでなく、万が一ベテランスタッフが退職しても点検が不可能という事態は避けられます。
3.レセプトチェック機能のデメリット
レセプトチェック機能を導入するデメリットは以下の2点です。
- 導入費用がかかる
- 慣れるまで時間がかかる
新システムの導入に費用はつきものです。レセプトチェック機能を導入して「期待する費用対効果が得られるのか」と不安に思うこともあるでしょう。
しかし、導入することで確実にその費用は回収できます。なぜなら返戻や今まで見逃していた算定漏れ件数の減少が予想されるため、収入の増加が見込まれるからです。点検時間が短縮されれば、自然と残業時間も少なくなります。収入が増え、人件費が削減できれば導入コストの回収は難しくありません。
また、今までのやり方を変えるのは手間がかかります。慣れるまでは操作がうまくできず、不便さを感じることも。しかし、労力と残業時間が減れば満足度が向上し、スタッフの離職防止にもつながるでしょう。
レセプト業務を効率化するなら、レセプトチェック機能の比較検討を
本記事では以下について解説をしました。
- レセプト業務における職業別の利点と問題点
- レセプトチェック機能の説明
- レセプトチェック機能導入によるメリット・デメリット
医師の負担や事務員の問題点を解決するためには、レセプト業務の効率化が必須です。導入にはメリットだけでなくコスト面などのデメリットも。しかし費用対効果は高く、従業員の満足度向上も見込めるでしょう。
電子カルテやレセプトコンピュータを導入の際は、レセプトチェック機能の機能差も検討材料のひとつに加えてみてはいかがですか。