2023.07.05
採用=クリニック×ブランディング?
採用とは?
採用とは、求人広告をして、履歴書をもらって、面談して、条件を詰めて、採用するという一連の流れになるかと思いますが、私にご相談が来る中で、最も悩んでいるのは、「求人」と「退職」が多いと感じています。ちなみに、「退職」は今回のテーマ【採用】とは関わりが薄そうですが、採用の時にマッチングできていれば、「退職」に悩むことは少なくなると考えています。
初めの入り口:求人
まずは、求人ですが、求人は、採用の第一歩です。主には、求人の方法として、求人媒体があります。「ハローワーク」「Indeed」「タウンワーク」「とらばーゆ」、などがそれに当たります。求人媒体に条件等を掲出すると、その条件に合った方々から、応募が来るわけです。
さて、求職者側から見た、求人の情報は、どのような内容になるのでしょうか。
【Googleで、クリニック×新宿×看護師×求人】で検索してみました。
A)正看護師
○○○○クリニック、東京都新宿区、提供元:ジョブメドレー
月¥28.5万~¥33万 フルタイム
B)看護職(正看護師)
○○○○株式会社、東京都新宿区、提供元:スマイルナース
月¥30.5万~¥36万 フルタイム
C)看護職、准看護師、正社員、パート、アルバイト、クリニック・診療所
医療法人○○○○、東京都新宿区、提供元:マイナビ看護師
月¥25万~¥40万 フルタイム
さて、皆様どう思いましたか?
基本的に、勤務内容と場所と金額がざっくりとしか書いてありません。
もちろん、気になる求人情報があったら、そこを深堀りしていくと思いますが、基本的にこの情報から、求職者は、医療機関を選んでいくわけですね。
条件を見て応募している段階では、求職者は医療機関の情報をほとんど手に入れていません。そのため、面接に来て実際に話をしたときに「何か違う」と違和感を抱くことは普通にあります。面接時は問題なかったとしても、働き出した後で「働きづらい」と退職してしまうこともあります。
ブランディングがされている場合
一方、ブランディングができている場合はこのルートをたどりません。
ブランディングされている医療機関では、医療機関の強みや求める求人像が明確になります。条件面ではなく、理念や方向性、雰囲気や具体的な勤務内容にいたるまで、ブランディングによって発信する情報が多ければ多いほど応募者はそれを事前に把握することができます。その上で応募してくることになるのです。
そのため、単に「この地域でこれくらいの年収が得られて、自分の専門分野であること」という条件ではなく、発信されている情報に共感して「この病院で働きたい」という積極的な動機を抱いている可能性が高くなるのです。
医療機関側が応募者についてあまり知らないという点では、従来の採用とは変わりません。しかし、ブランディングができているために「この病院に合った人材から応募が来ている」ということはわかります。そのため、面接で条件のすりあわせや医療機関について知ってもらう事が少なくて済みます。医療機関の理念や方向性などを踏まえた上で、採用された後は何がしたいのか、どのようにキャリアを積みたいのかなどを確認するという、より生産性の高い機会を得られることになるのです。
自分が職場を選ぶときって、報酬だけですか?
看護師の転職の理由を調べてみました。※「看護のお仕事」から抜粋です。
「給与が低い」という理由がダントツ1位になっていますが、「業務量が多い」「休みが取りにくい」「残業が多い」に関しては、「業務の時間」に関わる部分ですので、上記の内容をかみ砕くと、
- 「給与が低い」
- 「業務の時間や業務量が多い」
- 「人間関係が悪い」
- 「結婚・子育てのフォローがない」
- 「キャリアアップの環境がない」
と人は辞めていきそうです。
当たり前と言えば、当たり前な結果ですが、逆にこれが出来る環境であれば、どうでしょうか?
- 「キャリアアップの制度があり」
- 「キャリアや資格によって、給与が上がっていき」
- 「休みが自由に取れ」
- 「結婚・子育ての支援制度があり」
- 「人間関係が良好である」
働く環境としては、とっても良さそうですね。
さて、このような環境をクリニックで作ることはできるでしょうか?
弊社に来るスタッフ採用のご相談を、大きな分類として分けてみると、
1)個人クリニックで、受付と看護師のスタッフ採用に悩んでいる
2)医療法人でいくつもクリニックを持っていて、医師やコメディカルの採用に悩んでいる。
の2つに分けられます。
1)と2)の大きな違いはスケールメリットがあるかないかとなります。2)の方が、人事異動や、費用をかけて対応が出来る分、手が打ちやすいという事が違いになります。
確かに、上記の環境を整えるとすると、クリニックのスケールが必要になってきますし、看護師の人数が必要になりますし、給与も上げるとすると、患者さんの数や診療内容の質も問われてきます。
その為、現在では、クリニックでも個人開業のクリニックの採用は非常に厳しいものになってきています。
ブランディングの方法
そうは言っても、クリニックでの採用は死活問題です。採用に困ったなと思ったら、ブランディングという手法も一つとして、考えておきましょう。
弊社では、ホームページを利用したブランディングが最も有効と考えています。理由としては、情報量に制限が無く、アクセスフリーな媒体だからです。
次に内容ですが、医療機関のブランディングは、医療機関で考えている事や行っている事を、しっかり取りまとめて、表に出すだけで、プランディングになっていくと考えています。
医療機関によって、弱みと思っている部分は逆に強みになることは多々あります。特定の症例が多ければ、その症例を研究したい、その分野で成長したいと考えている人には強みに映ります。導入している医療機器が強みになることもあります。「海が近い」「都内に出やすい」「交通の便がよい」といった環境的な要因も強みとして考えられることもあります。こうした強みを洗い出し、それをコンテンツに落とし込んで必要な人に届け、それが事実とイコールであれば、その噂が業界で広がり、その医療機関でのブランディングの成功に繋がるという流れになります。
医師の求人でも、薬剤師の求人でも、OT,PT、STの求人、その他、様々な職種でも同様で、求職者の立場に立って、体系立てて特徴を伝え、求職者自身がこの医療機関で働いたら、どういう働き方になるのか、どういった同僚と仕事をするのかをイメージさせることが、とても重要となります。
皆様の医療機関でも、角度を変えて病院を見直すことが出来れば、現在弱みと思っている部分が逆に強みとなる可能性もありますので、色々な角度から是非とも見直してみてください。
■著者
株式会社DEPOC 代表取締役 安岡俊雅
医療業界のWEBサイト作成にかかわり18年目に入る。
現在は、Webサイト作成に限らず、大学病院の医局や学会運営、一般病院、クリニックまで幅広く支援。
WEBサイト:https://www.depoc-medical.jp/
(執筆著書)
- 「医療機関のブランディング~求人・集患の秘訣~」
- 「医師のキャリア革命~成功の鍵はお金か知的好奇心か」