2023.06.28
【2023年7月末】電話診療の初診特例終了|オンライン診療への対応方法は?
新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって認められていた、初診時の電話を含むオンライン診療の診療報酬における特例措置が2023年7月31日で終了します。これにより、同年8月以降もオンライン診療を行うには、7月末までに「情報通信機器を用いた診療に係る施設基準」の届出が必要です。
今後、オンライン診療は情報通信機器を用いたシステムに集約されます。電話での初診とその診療報酬の算定は、患者が求めた場合のみ可能になるのです。これを機に、オンライン診療システムを導入してはいかがでしょうか。
この記事では、オンライン診療を行うために必要な届出と、施設基準について解説します。
1. オンライン診療の診療報酬特例とは
オンライン診療は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防ぐために認められた制度です。2020年4月から導入されたもので、特例として再診だけではなく「初診の電話診療」も可能としています。
初診のオンライン診療の場合、診療報酬は214点と算定されています。
厚生労働省が特例措置(0410対応)の終了を発表
2023年5月に、新型コロナウイルス感染症は2類から5類へ移行されました。これに伴い、オンライン診療の特例(通称:0410対応)も同年7月31日で終了が決定しています。8月からは、初診の電話診療およびその初診料の算定が認められなくなります。
この特例措置の廃止を通知しているのが、厚生労働省が同年3月31日に発表した事務連絡「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更に伴う新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて」です。
今後は情報通信機器(テレビ電話可能なシステム)に集約
上記の事務連絡では、「7月31日以降にオンライン診療を実施する場合は、7月末までに施設基準の届出を行い、全ての医療機関が令和4年度診療報酬の算定要件に基づいて実施する」と定めています。
つまり、きちんと設備・体制を整えて届け出れば、8月以降もオンライン診療は引き続き可能で、診療報酬も受け取れるのです。
オンライン診療は、今後も一定の需要が見込まれる制度です。このタイミングで、オンライン診療システムを導入してはいかがでしょうか。
2.オンライン診療を開始する流れ
クリニックでオンライン診療を開始する際は、以下の手順で対応します。
- 自院の方向性とオンライン診療の目的を確認
- 運用に合ったシステムを選定する
- オンライン診療研修の受講
- 施設基準届出「情報通信機器を用いた診療に係る基準」を提出
- 医療情報ネットに登録する
- オンライン診療の診療計画書を作成する
それぞれの手順について、詳しく解説します。
ステップ1:自院の方向性とオンライン診療の目的を確認
まずは、なぜ自院でオンライン診療を取り入れたいのかを明確にしましょう。考えられる理由としては、大きく以下の3つが挙げられます。
- 初診の患者さんを獲得したい
- 再診の患者さんが受診する際の効率化を目指したい
- 上記の両方をかなえたい
オンライン診療システムは多くのメーカーが展開しており、特徴もさまざまです。選定時は自院の方向性や導入目的が大いに影響するため、まずは狙いを明らかにしてください。
ステップ2:運用に合ったシステムを選定する
洗い出した方向性や目的に合うオンライン診療システムを探し、導入するものを選びましょう。これまで電話による診療のみを行っていた場合、システムの導入は不可欠です。
システムを選ぶ際は、以下の点にも着目してください。
- 予約→診察→会計が滞りなく行えるか(運用に合っているか)
- 患者さんが操作しやすいか
- 導入するシステムの初期費用や月額料金(クリニックの負担額)
オンライン診療システムは、クリニックだけではなく患者さんも使用するものです。スタッフにとっての使いやすさだけではなく、患者さんがスムーズに使えるかどうかも重視しましょう。
ステップ3:オンライン診療研修の受講
オンライン診療を行うためには、厚生労働省が実施している「オンライン診療研修」の受講が必要です。この研修ではオンライン診療に関する5つのテーマをeラーニング形式で学習します。
まず、厚生労働省「オンライン診療研修実施概要」から受講申請を行います。このとき、「医師資格証ID」が求められるため、用意しておきましょう。手元にない場合は「日本医師会電子認証センター」に申請すると医師会の非会員でも取得できます。
ステップ4:施設基準届出「情報通信機器を用いた診療に係る基準」を提出
続いて、オンライン診療を行うために必要な書類を提出します。以下2種類の書類を、地方厚生局のWebサイトからダウンロードして記入しましょう。
- 基本診療料の施設基準等に係る届出書(別添7)
- 情報通信機器を用いた診療に係る届出書添付書類(別添7の様式1)
提出先は、自院の所在地を管轄する厚生局の事務所です。なお、オンライン診療の診療報酬は書類提出後、厚生局に受理された日の原則翌月から算定できます。
ステップ5:医療情報ネットに登録する
オンライン診療ができるクリニックであることを示すために、「医療情報ネット(医療機能情報提供制度)」にも登録しましょう。これは、各都道府県の医療機関を患者さんが検索できるシステムです。
医療情報ネットに登録することで、自院がオンライン診療を行っていることを周知できます。「医療情報ネット」を通じてオンライン対応可能な医療機関を検索する患者さんを集めるためにも、登録は必須でしょう。
医療情報ネットに登録するためには、各都道府県または管轄の保健所に届け出る必要があります。ここまで終われば、事前準備は完了です。
ステップ6:オンライン診療の診療計画書を作成する
実際にオンライン診療を希望する患者さんの「診療計画書」を作成してください。
オンライン診療はその性質上、対面での診療に比べて患者さんの容体や情報が把握しづらいものです。診療計画書は、そういったオンライン診療ならではのデメリットも記載し、患者さんに説明して納得してもらうために用意します。
患者さんごとに診療計画書を作成・提示し、内容について患者さんからの合意を得なくてはなりません。また、作成後は2年間の保存が望ましいとされているため、取り扱いは慎重に行いましょう。
なおオンライン診療が実施できるのは、次のような例が挙げられます。
- 治療継続のためにオンライン診療と対面診療との組み合わせが求められる
- 通院が患者さんの心身や介助者に大きな負担となっている
- 専門医が患者さんの近くにいない
3.オンライン診療に必要な施設基準
オンライン診療を行えるのは、情報通信機器を使った診療をするために適切な体制が整っており、かつ厚生労働省『オンライン診療の適切な実施に関する指針』に沿って診療を行う体制ができている保健医療機関のみです。
具体的には、以下の3点を満たしているかが問われます。
- 院内の治療実施があらかじめ想定される場合、その実施場所が確認できること
- 対面診療を提供できる体制を整えていること
- 自院で対面診療を行えない場合、他の医療機関と連携して対応できること
オンライン診療は、対面診療との適切な組み合わせが求められるものです。そのため、オンライン診療システムの導入をしているだけではなく、自院内で対面診療ができることや、万が一対面診療ができない場合の対策も求められます。
4.オンライン診療の算定要件
「令和4年度診療報酬改定」では、オンライン診療に関する4つの評価の新設・見直しが行われました。
新設されたのは、初診・再診の評価。見直されたのは、医学管理料等に係る評価と、在宅時医学総合管理料におけるオンライン在宅管理に係る評価です。
初診
「オンライン診療の適切な実施に関する指針」の改定で新設された項目です。情報通信機器を使って初診をした場合、点数は251点となりました。オンライン診療の特例が認められた段階での初診料が214点だったことを考えると、大きな変更だと言えるでしょう。
同時に、「オンライン診療料の算定数が全体の1割以下」「医療機関と患者さんの家との距離が30分以内である」といった条件も撤廃されています。
再診
再診の評価についても、2つ変更がありました。これまで使用されていた「オンライン診療料」が廃止となり、代わりに情報通信機器を使って再診をした場合の評価が新設されたのです。新設されたのは「再診料」と「外来診療料」で、点数はいずれも73点です。
また初診と同様、「オンライン診療料の算定数が全体の1割以下」「医療機関と患者さんの家との距離が30分以内である」の条件は撤廃されています。
初診および再診の算定要件
新設された項目である初診・再診について、以下の算定要件も定められました。
保険医療機関で初診を行う場合
初診料は、保険医療機関で行った場合にのみ算定するとされました。
前述の施設基準に適合し、かつその旨を地方厚生局長に届け出ている場合に限り、初診料は251点となります。
情報通信機器を用いた診療を行う場合
厚生労働省が設けている「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に沿って行ったオンライン診療に対し、初診料・再診料が算定できます。
このとき、診療日、診療内容、診療時間などの診療録への記載が必要です。
情報通信機器を用いた診療を行う場所
オンライン診療を行う場所は原則、「保険医療機関に所属する保険医が保険医療機関内」と定められました。
もし保健医療機関以外で実施する場合は、「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に沿った診療と「診療を行った場所の事後確認ができること」が求められます。
緊急時の対応
患者さんの容体急変など緊急事態が発生した場合の対応は、オンライン診療を行った保健医療機関が担うこととされました。
ただし、夜間や休日などで保健医療機関が対応できない日に発生した場合は、患者さんに事前に説明したうえで別の医療機関での受診を手配しなくてはなりません。
そのため、あらかじめ以下の点を患者さんに確認し、診療録に記載しておく必要があります。
かかりつけ医がいる場合 |
そのかかりつけ医が所属する医療機関名 |
かかりつけ医がいない場合 |
|
体制整備
前述のとおり、オンライン診療を行う際は対面診療と組み合わせることが必要になりました。そのため自院には、対面診療できる診療体制が必須となります。
加えて、緊急時の対応ができる体制の構築も欠かせません。患者さんに、オンライン診療を行った医師では対応できない容体急変があった場合は、その医師自ら他の医療機関に連絡し、対応を求めなくてはならないので、事前に他の医療機関との連携体制を整えておく必要があります。
指針に沿った管理
自院で行った診療や薬の処方が適切であったことを、診療録や診療報酬明細書の摘要欄に記載しなくてはなりません。
診療の内容は、厚生労働省が定めた「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に沿い、かつ同方針内で示されている、一般社団法人 日本医学会連合が作成した「オンライン診療の初診に適さない症状」を踏まえていることが求められます。
薬の処方については、同じ指針の内容に沿い、かつ「オンライン診療の初診での投与について十分な検討が必要な薬剤」(一般社団法人 日本医学外連合)など関係学会が定める診療ガイドラインを踏まえる必要があります。
オンライン診療の導入に迷ったら、目利き医ノ助!
オンライン診療はシステムを導入すれば使えるものではなく、院内の運用体制の構築やクリニックに合ったシステム選びが重要です。
目利き医ノ助はITシステムの導入と運用のプロ集団です。無料オンライン面談で診療科や貴院の診療スタイルに合わせたITシステムの運用提案から製品(サービス)の紹介までトータルでサポートいたします。システム選定にお困りのクリニック、医師の皆様はお気軽にご相談ください。