2022.12.14
IT導入補助金を活用して電子カルテ等のITシステムを導入!~事前に知っておくべき、制度の概要と事前の準備~
電子カルテやレセコンの入れ替え、周辺システムなどの導入を検討するにあたり、IT導入補助金を活用したいと考えておられるクリニックも多いと思います。IT導入補助金は、一般企業だけでなく医療機関も申請ができる補助金です。電子カルテ、ウェブ予約システム、オンライン診療システム、精算機など院内で使用するITツールやITシステム(以下、「ITシステム」と呼びます)にご興味がある場合、導入を検討するよい機会になります。
IT導入補助金公式サイトをご覧になるとわかりますが、記載の情報はボリュームがあり複雑で、理解が難しいようにお思いではないでしょうか。用意する資料や入力する情報も、クリニックのふだんの診療ではなじみが薄いものばかりです。さらに、申請はすべてオンラインで行ないますので、不慣れな方からするとハードルが高いと感じるかもしれません。
本記事では、これからIT導入補助金の申請を検討されるクリニックを対象に、制度の概要と手続前の準備事項をお伝えします。補助金のプロセス自体はそれほど複雑ではありません。しかし、申請には締切日があり、行政のネットサービスのアカウント取得など準備作業の中には意外と時間がかかるものがあります。大まかな制度の枠組みをしっかり理解しておいてください。
1.IT導入補助金とは
IT導入補助金制度は、中小企業や小規模事業者が直面する制度変更(働き方改革やインボイス制度など)や環境の変化に対応するために、生産性の向上や業務の効率化を実現するITツールの導入費や事業費などの一部経費を国が補助してくれる制度です。
補助金には、いくつかの分類があります。毎年少しずつ仕組みが変わりますが、2022年度は従来からある通常枠(さらにA類型、B類型に分かれます)のほか、デジタル化基盤導入枠、セキュリティ対策推進枠(2022年8月開始)の3つの枠が設定されました。これらの枠は、導入予定のITツールやシステムに応じて選択することになります。
なお、本記事では、このうちの通常枠(A類型・B類型)について解説します。
本記事では、このうちの通常枠(A類型・B類型)について解説します。
2.対象となる事業者及び申請の条件
IT導入補助金は、制度の都合上、対象となる事業者が中小企業や小規模事業者に限定されています。対象事業者の要件は下記の中小機構のウェブサイトをご覧ください。クリニックは通常、「補助対象者:中小企業」の定義では、「⑨医療法人、社会福祉法人」、「補助対象者:小規模事業者」では、「⑶製造業その他の項目」にあてはまります。
(外部サイト)一般社団法人サービスデザイン推進協議会ウェブサイト|「IT導入補助金2022」 補助対象となる事業者 通常枠(A・B類型)
3.補助対象経費
「IT導入補助金支援事業者」があらかじめ登録している、「ITシステム導入費用」が補助の対象となります。ここでIT導入補助金支援事業者とは、補助金の申請プロセスをクリニックなどの申請当事者とともに共同で進める事業者(=パートナー)のことをいいます。ITベンダーや販売代理店のこととお考えください。
通常枠では、ソフトウェア購入費・クラウド利用料(最大1年分)・その他導入関連費等を対象経費として、補助率は経費の1/2以内です。補助金は、A類型の場合では30万円~150万円未満の金額範囲、B類型では150万円~450万円未満の範囲で支給されます。B類型のほうが補助額が有利ですが、要件がA類型より厳しくなります。この後に説明する要件の記述をご確認ください。
4.申請区分とITシステムの分類・要件
(1)ITシステムの分類
IT導入補助金の申請において補助の対象となるITシステムは、大分類Ⅰ「ソフトウェア」、大分類Ⅱ「オプション」、大分類Ⅲ「役務」に分類されます。IT システムの導入においては、通常、大分類Ⅰに該当します。
(2)ITツールの要件
申請にあたっては、IT導入補助金支援事業者が事前に登録をしているITシステムの中から導入する製品名を選択し、申請手続きを行います。その際に導入するITシステムが上記の大分類Ⅰ「ソフトウェア」に対して設定されている「プロセス」を1種類以上含んでいる必要があります。また、大分類Ⅱ、大分類Ⅲの導入に係る各経費も合わせて補助対象経費として申請する場合でも、下記の「プロセス」が1種類以上含まれている必要があります。
(3)類型の詳細とプロセス
上述した通常枠におけるA類型とB類型では、含まれる「プロセス」の数に違いがあります。
【A類型】…上記業務プロセスのPコード「共P-01」~「各業種P-06」のうち、1種類以上のプロセスを保有するソフトウェアを申請することが必要です。
【B類型】…上記業務プロセスのPコード「共P-01」~「各業種P-06」のうち4種類以上のプロセスを保有するソフトウェアを申請することが必要です。
(4)取扱対象製品
補助金の取扱対象製品は、事前にメーカーが当局に申請し、対象として認められているものです。導入を予定している製品が対象かどうか、事前に確認してください。
5.交付申請後の流れ
補助金の申請手続きはIT導入補助金支援事業者がリードしてれるはずですが、おおまかなプロセスの流れは、事前に理解しておきましょう。補助金の交付後、実績報告、効果報告があります。
6.公募スケジュール
スケジュールは随時更新されます。IT導入補助金の公式ページでご確認ください。
(外部リンク)一般社団法人サービスデザイン推進協議会ウェブサイト|「IT導入補助金2022」事業スケジュール
7..事前に準備する資料等と確認事項
個人やクリニックの経営状況について証明する準備資料の準備のほか、行政サービス等のアカウントやIDの取得が必要です。想定するよりずっと時間がかかるため、申請を始める前に準備をしておきましょう。
(1)gBizIDプライムの取得
gBizIDプライムは、複数の行政サービスを1つのアカウントで利用することができる認証システムです。IT導入補助金2022の申請には、このgBizIDプライムの取得が必須です。登録完了まで数週間かかりますので注意が必要です。
(2)SECURITY ACTIONの自己宣言IDの取得
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施している制度で、中小企業・小規模事業者等が情報セキュリティ対策に取り組むことを自己宣言する制度です。IT導入補助金2022の申請において、自己宣言IDの取得が必須となっています。「1つ星」もしくは「2つ星」のいずれかで自己宣言を行う必要があります。
(3)添付書類の準備
■法人の場合
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履歴事項全部証明書……法務局に登録されている法人の登記事項を証明する書類です。法務局の窓口またはオンラインで取得することができます。申請日より3か月以内に取得したものが有効です。すべてのページの提出が必要です。
- 法人税の納税証明書(その1)もしくは(その2)……法人税の納税証明書はその1からその6までありますが、そのうちの「その1」「その2」が必要です。税目が法人税であること、税務署が発行していること、申請時点で取得できる直近分であることが必要です。
■個人事業主の場合
- 運転免許証……申請日が有効期限内であること、裏面に記載がある場合には、裏面も提出が必要です。
- 運転経歴証明書
- 住民票……申請日より3か月以内に取得のもの)
上記3つのうち、いずれか一つが必要です。さらに下記2つが必要です。
- 所得税の納税証明書……税目が所得税であり、税務署が発行しているもの。申請時点で取得できる直近分を取得してください。
- 確定申告書B……利和3度分の確定申告書であり、税務署が受領していることが分かるもののみ認められます。確定申告書第一表に収受日付印が押してあるもの。電子申告の場合には、受付日時が記載してあるものもしくは、「受信通知(メール詳細)」+確定申告書Bで提出します。
※e-TAXの申請状況によって異なります(税務署において申告もしくは自宅から申告)
(4)確認事項
申請が進むと、ネット上に用意される申請ページの「マイページ」に必要事項を入力する必要があります。入力の際には、3期分のクリニックの売上高や営業利益など決算期の財務情報を入力する項目があります。その他に、従業員数や年間の平均労働時間なども必要です。クリニックの決算書や申告書を事前に手元に準備のうえ内容を確認し、必要があれば契約している税理士などにご確認ください。下記に入力で必要な項目をあげます。
【確認項目】…売上高(3期分)、粗利益、営業利益(2期分)、経常利益、減価償却費、資本金、主たる事業所における従業員の事業所内最低賃金、給与の支給総額
7.最後に
IT導入補助金は、補助を受けるための申請の準備に時間がかかります。特に、毎日忙しいクリニックではなかなか申請が進まないことが想定されますので、早めに申請にとりかかることをお勧めします。