クリニック向けWeb予約システム
~おすすめ機能と選び方を解説~

Web予約システムの導入には、スタッフの負担軽減やコストの削減、患者満足度の向上など多くのメリットがあります。コロナ禍で「クリニックや病院も予約してから行くもの」という認識が広まったとの指摘もあり 、今後もWeb予約システムの需要は高まると考えられます。
多くの企業からさまざまな機能のWeb予約システムがリリースされているなかで、自院に適したシステムの選び方を解説します。

1. Web予約システムの導入メリット

矢野経済研究所が2019年に新規開業した約100軒のクリニックに対して実施した調査では、約6割が「Web予約システムを導入した」と回答しました(注)。 これだけ導入実績があるのは、以下のようなメリットをクリニックが感じているからだと考えられます。

(注)矢野経済研究所HP
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2328

メリット1:スタッフの負担軽減

システムを導入すると個別に予約対応する手間がなくなり、スタッフが本来の業務に集中しやすくなります。

事務スタッフや看護師が電話対応に追われる場面は少なくありません。しかしWeb予約システムで患者さん自らが予約できれば、スタッフの負担も減って生産性が上がるはずです。残業時間なども減って、結果的に人件費の削減にもつながります。

メリット2:待ち時間の削減

患者さんのストレス軽減にもつながります。多くの医療機関で課題となっているのは、来院から診察までの待ち時間の長さでしょう。
同じ時間帯に予約できる人数をコントロールすれば、確実に待ち時間を減らせます。加えて「あと何人」「あと約30分」といったように目安が分かるようになっていれば、なおさら患者さんのストレスは減らせるはずです。

メリット3:集患の効果がある

近年患者さんは受診するクリニックの検討にあたり、インターネットの情報を見て判断することが多くなりました。その際に、ネット上で診療予約ができることを検討の有力な材料とする患者さんもおられます。ドクターズ・ファイル編集部が2021年に実施した調査では、Web予約の有無を「重視する」または「確認する」と回答した人は約7割に上りました(注)。 Web予約の可否によって集患の度合いにも影響が出ると考えられます。

加えて夜間や休診日など、電話での予約を受け付けていないときでも新たに予約を獲得できる可能性があり、機会損失を防げます。

注)株式会社ギミック|患者ニーズ研究所
https://kanjakenkyu.online.doctorsfile.jp/posts/21774906?categoryIds=3420309

メリット4:混雑を平準化できる

Web予約システムの中には、特定の時間帯の予約枠を増減できるものもあります。もともと混雑する時間の予約枠を減らし、比較的空いている時間の枠を増やすことも可能です。空いている曜日や天候が悪い日なども、予約が入れば来院が見込めます。全体の混雑が平準化でき、収入を安定させやすいでしょう。

メリット5:ヒューマンエラーの防止

予約が相次いだり、クリニックが混雑したりしている場合、ミスが起きやすくなります。特にキャンセルや時間変更がある場合、あわただしい中、手作業で対応していると間違いも起こるかもしれません。

Web予約システムでは患者さんの情報をシステム内で自動管理できるため、間違いが起こりづらくなります。リアルタイムで情報を共有できるため、スタッフ間の引継ぎ漏れなども減少します。

2.Web予約システム導入のデメリット

Web予約システムは便利なものですが、使い方を誤ると不利益ももたらしかねません。これから紹介する2つのデメリットについても把握したうえで、自院に合うシステムはどれかを考えてみましょう。

デメリット1:ITの苦手な患者さんからの問い合わせが増える

Web予約を重視する方がいる一方で、ITが苦手で使いこなせない方もいます。特に高齢者の患者さんが多いクリニックでは、問い合わせが増えることで結果的にスタッフの業務量が増えてしまう可能性も考えられます。そのため、電話受付も例外的に認める、予約なしで来院した患者さんのルールを決めておくなどの準備が必要でしょう。

デメリット2:運用を誤るとクレームにつながる

Web予約システムを導入したからといって、予約を取り過ぎないよう注意しましょう。診察が予想以上に長引き、時間通りに患者さんを案内できないことは珍しくありません。また、急患が来ることもあります。わざわざ時間予約をした患者さんを長時間待たせる状況になれば、クレームにつながる恐れもあります。

現場の状況を見て予約枠を調整できること、適切な運用方法を提案してくれる会社のサービスを選ぶこと、などが重要です。

3.Web予約システムの種類

Web予約システムには、予約方法の異なる以下の3種類があります。

それぞれの特徴を解説します。

時間予約

「時間予約」は、診察を受ける時間の枠をWeb上で事前予約する方法です。美容院や飲食店の予約システムと似ており、患者さんには便利な方法だと言えます。

しかし診察時間が延びたり、予約せず来院する患者さんもいたりするため、正確な時間の指定が難しいこともあります。事前に「時間が変更になる可能性がある」「来院後に待つ場合がある」といった案内をしておきましょう。

また、患者さんが予約時間に遅れた場合のルール決めと、その周知も必要です。「遅刻した場合は予約枠の中で一番最後に診察する」としても良いでしょう。時間予約の枠をうまくコントロールすると、混雑時間の平準化や待ち時間の短縮につながります。

順番予約

「順番予約」は、Web・電話などの方法を問わず予約した順に番号を渡し、順番に診察する方法です。クリニック内で待つ時間が短く、順番が近づくまで自由に時間を使えます。来院前から順番待ちもできるため、患者さんから重宝されるでしょう。

一方で課題として、時間予約と比べると診察時間がはっきりと分かりづらい点が挙げられます。おおよその待ち時間程度なら表示できますが、具体的に何時とは伝えにくいです。

ハイブリッド型

時間予約と順番予約を組み合わせた、「ハイブリッド型」もあります。時間予約の患者さんを優先しつつ、予約なしで来院した患者さんの順番も管理できる点が特徴です。運用後の状況に応じて、いずれか一方での利用もできます。

4.注目したいWeb予約システムの機能

Web予約システムにはさまざまな機能があります。

うまく使いこなせば、よりスムーズに予約対応ができるでしょう。

LINEなど多様な予約方法への対応

Webブラウザや専用アプリを使うシステムのほか、LINEを介した予約が可能なシステムもあります。LINEは普段からコミュニケーションツールとして使っている人が多く、比較的なじみがあります。既存の患者さんを案内しやすくなる以外に、新患の方の獲得にも効果が見込まれるでしょう。

連鎖予約や予防接種管理 

診察予約と連動して、検査やリハビリなど、検査機材や関連する機器などのスケジュールも同時に押さえられます。

また、予防接種で一定期間を空ける必要がある場合、次回接種可能な時期を自動的に提示する機能がある製品もあります。患者さんごとにスケジュールを管理・調整する必要がなく、スタッフの負担軽減に効果的です。特に予防接種の多い小児科では、メリットも大きいでしょう。

ホームページや院内での待ち時間表示

診察の順番や待ち時間を、院内のモニターやクリニックのホームページにリアルタイムで表示できる機能を備えた製品もあります。院内での患者さんの待ち時間削減に効果が期待できます。患者さん同士の接触の機会も減らせるため、感染症対策としても有効です。

電子カルテや問診システムなどとの連携

自院の電子カルテや問診システム等と連携できる機能がある製品もあります。電子カルテと連携できれば、来院予約があったらすぐに患者さんの情報を呼び出せて、検索の手間を減らせます。来院前に患者さんが入力できる問診システムを併用すれば、よりスムーズに診察ができるでしょう。

ただし、全ての予約システムと連携できるとは限りません。事前にWeb予約システムのメーカーに問い合わせをして、自院のシステムと連携できるか確認しておくのが得策です。

5.Web予約システムに関するよくある質問

最後に、Web予約システムについてよく寄せられる質問と、その回答を紹介します。

Q1.Web予約システムの導入効果は?

A1.Web予約システムを導入して適切な運用ができれば、スタッフの負担軽減や患者さんの待ち時間短縮などの効果があります。

ただしWeb予約システムの機能は製品によってもさまざまですので、自院に合ったシステム選びが重要です。また、当然ですが導入すれば良いものではなく、自院の実情に応じた適切な運用は欠かせません。。

Q2.診療予約システムと電子カルテなどとの連携は可能ですか?

A2.最近は各社の連携が進んでおり、電子カルテの他にも問診や会計、経営分析などのツールとも連携させられる場合があります。複数のシステムを連携させることで、スタッフの入力・照合の手間を減らせます。ヒューマンエラーも起こりにくくなるでしょう。診療予約システムの導入の際は、クリニックの運営上、システム間連携が重要になるかどうか、よく検討しましょう。