導入製品
課題
効果
楊理事長:スマイル眼科クリニックを開設したのが2001年、まだDXなどという言葉がなかった頃です。そのときから「データを経営に活かす」という発想でクリニックを運営していました。本来、医療は研究成果、ファクトベースでなければ話を聞いてもらえない世界です。ところが、クリニックの医療側でなく経営側の話となると、数字に基づいて判断するという発想は当時あまり見られませんでした。自分のクリニックでは、患者数やその日の収入、どのような疾患があったかなど経営に必要な数字を観察し、PDCAを回すことで、これまでずっと改善を続けてきました。
高田事務長:2022年の1日平均来院患者数は96人で、これはコロナが流行した前の2019年より約10%多い数字です。当初、コロナは開院以来の最大の困難だと考えていました。しかし、ITシステムとそれを運用するスタッフの力、さらには患者さんが適応したことで、わずか数か月で診療環境を効率化できたことが来院数の増加につながったと思っています。
象徴的な変化が完全予約制の導入です。コロナ前までは、「完全予約制を導入したら患者さんが減る」と私たちも考えていましたが、実際には待ち時間も減るために患者さんにも好評でした。曜日や時間帯、当日の天候に関係なく患者さんの数をほぼ平準化できたのも経営面ではとても大きなことです。
楊理事長:私たちのクリニックの経営では、データに基づいて改善を積み重ねる、ということを何よりも重要視しています。肌感覚ではないのです。事務長が話した待ち時間も、受付から診察室に呼ばれるまでの時間、そこから会計までの時間がログでわかるようになっています。診療報酬の平均単価も一目で分かります。こうした数値を日々リアルタイムで観察して、課題に対して対策を立てるのが本当に重要なのです。
楊理事長:レセプトのデータ分析などは分かりやすい例です。どの検査、処置が去年と比べて減ったか増えたか一覧化されます。ある時期、平均単価の低下に気づきました。分析データを確認したところ、網膜裂孔と網膜剥離に対するレーザー治療の件数が大幅に減少していることが判明しました。さらには、網膜疾患を発見するための散瞳下眼底検査の実施数がそもそも減っていました。
そこで、患者さんに向けた検査を促すポスターを掲示しました。「飛蚊症の症状は網膜裂孔や網膜剥離の前兆である可能性があります。眼底検査を受けましょう」などとお伝えすると、症状が気になっている患者さんは自分で検査を希望されます。早期に治療できれば患者さんの回復可能性も高まりますし、定期的に通院する患者さんが増えるのはクリニック経営にとってメリットです。
楊理事長:私が3Beesの開発や運営を行う株式会社メディ・ウェブを設立したのが、2007年です。まさに当院での苦労をパッケージ化して、他のクリニックの経営に活かしてほしいと考えたのがきっかけです。まだクラウドという概念もなく、「クラウド上で経営分析できるツール」と言っても理解してもらえない時代でしたね。だから、最初は誰にでも効果がイメージしやすい予約管理や順番管理などのシステムを一般に向けて販売し始めました。
その後に販売した、経営分析ツール「3Beesコンパス」も多くのドクターに使いやすい、わかりやすいと評価をいただいています。
牧内様:実際に多くの眼科以外のクリニックで使われています。一般的な保険診療なら患者数×単価-コスト=利益という絶対的な原則は変わりません。
それにプラスして、初診と再診の割合はどれくらいか、再診のリピート率や新規患者さんがどういう経緯で来院したのか、ホームページを見てくれたのかなどをマーケティングの観点から確認するのはどの診療科でも同じです。
診療を可視化、見える化できるということが大事です。20年前に高田事務長がエクセルを使い、手で関係する数値を集計・管理していたものが原点です。そこから改良を重ねてきたのが現在のシステムです。
楊理事長:そうです。「データ」というと数字ばかりに目が行きがちですが、「インフォメーション」も重要なので、アプリ上に「業務日誌」の欄を作り、スタッフの日々の気づきを記入してもらっています。ここから、新たな経営改善のヒントが見つかることも多いのです。
普通、日誌というとどんなイメージがありますか。「特になし」や「先週と変化なし」などと形式のみになりがちではないでしょうか。当院では「記入して終わり」とならないような工夫も行っています。
高田事務長:まずは、ちゃんと私たちが目を通して「すばらしい意見だった」「よい気づきをありがとう」とフィードバックを伝え、よいアイデアは実際に取り入れることが大切です。上司が見ていることが伝われば、本人にはさらにモチベーションが生まれます。「業務日報」は人材育成にも効果的で、現場で気づく力も養われるわけですね。
日報と聞くと、1日の診療が終わってからまとめて書くイメージがあるかもしれませんが、うちのスタッフは午前中から入力画面を開けてあり、気になったことがあったらさっと入力しています。
牧内様:クリニックのLINE公式アカウントに約12,000名が登録しています。LINEから予約や順番待ちの登録ができる点に加えて、LINEを経由してWeb上の問診に回答してもらうように誘導しているので毎月200~300名ずつLINE登録者が増え続けています。
楊理事長:月毎に、診療の案内などを定期的に送っています。郵便は何らかの案内をする際にコストがかなりかかります。また、クリニックからいきなり連絡があると患者さんを驚かせてしまうので、電話もそのような目的の手段としては不適当でした。それがLINEでのお知らせなら、受け取る患者さんも抵抗がなく、クリニック側もコストがほとんどかかりません。問診で利用するなら「クリニックでの待ち時間も減る」というメリットもあります。
また、LINE登録患者さんに対して、「インフルエンザ予防接種のご案内と予約」という案内を予防接種の季節が始まる頃に配信しています。毎年、LINE経由で3Beesの予約システムから1,000名以上の予約を受付処理しています。もしこれが電話受付なら回線もパンクしてしまったでしょうが、LINEならそのような心配もいりません。非常に効率的なマーケティングの手段だと思います。
楊理事長:さまざまなクリニックの事例がWebで簡単に調べられる時代になりました。また開業医の先輩に聞けば「企業秘密」と答える先生は少数で、丁寧に情報を教えてくれる方が多いと思います。過去の事例は徹底的に参考にすべきですね。
今から開業する30~40代の先生は、スマートフォンやクラウドを使っている期間も長く情報収集にも熱心ですよね。成功のセオリーと言われていることを学び、着実に継続すれば、誰もが自ずと成功できる気がします。昔ならITに詳しく、自分で「プログラミングができます」みたいな先生が有利だったかもしれませんが、これからは「関心」だと思います。患者さんやスタッフ、そして経営に対する「関心」、「情熱」と言い換えてもいい。日々の数字と真摯に向き合い、改善を重ねていくことの原動力は情熱ですよ。私たちのデータも、できるだけ多くのクリニックで活用してほしいと思っています。
(下記画像は左から順に、メディ・ウェブ 牧内 様、スマイル眼科クリニック 事務長 高田 様、同 理事長 楊 先生)
クリニック名 | 医療法人 健究社 スマイル眼科クリニック |
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院長 | 岡野 敬 先生 |
所在地 | 神奈川県横浜市青葉区青葉台1-6-12 カンゼームビル4F |
医院紹介 | 東急田園都市線の青葉台駅から徒歩1分の至便なビルの4階、ゆったりした快適な空間と親しめる内装で、子どもからお年寄りまで多くの患者さんが訪れる「青葉台スマイル眼科クリニック」。加齢黄斑変性や緑内障の検査に有用な3D‐OCT(3次元眼底像撮影装置)など、検査装置や治療用の機器も幅広く揃える。 |
作成日 | 2023年1月 |