松戸常盤平おなかと胃・大腸カメラと内科のクリニック

院長 北村 英俊先生

内科

「理想はペーパーレス!」ITが得意な院長はあえて紙という現実を受け入れた

外来患者数/日 平均30人

スタッフ数 8人

導入製品

  • 電子カルテ:メドレー「CLINICS」
  • ドキュメントスキャナ:PFU「ScanSnap iX1300」
  • Web予約システム:GMO「「メディカル革命 byGMO」
  • セミセルフレジ:「BUSICOM」 ※stera terminal(ステラターミナル)と連携
  • PACS:エムネス「LOOKREC」
  • Web問診システム:HERO innovation「メルプWEB問診」

課題

  • 知り合いの承継型のクリニックで知った途中で紙を電子化する難しさ
  • 馴染みの薄い土地での開業、知り合いのスタッフはいなかった
  • 新規開業の前はノウハウもなく設備やITの選定に関する情報は限定的

効果

  • 早期にペーパーレスの理想を撤回し、実現可能なレベルを把握できた
  • 開業医向けコミュニティで知り合った開業医の先輩から得られる生の情報が参考となり、決断できた
  • 順番待ちの仕組みや受付業務を独自に改善、上々のスタートを切ることができた

開業を決断してからまだ1年程度とお聞きしました。相当なスピードですね。

北村院長:開業を決心したのが2022年6月で、10月に物件を決断しました。開業が2023年6月でしたので、たしかにあっという間ですね。開業のきっかけは、消化器系のがんの早期発見をしたいという思いからです。国立がん研究センターなどで勤務していましたが、すでに治療が難しい段階の患者さんがほとんどだったことにジレンマがありました。総合病院で患者さんが来るのを待つのではなく、かかりやすい医療機関を自ら開設することで早期発見、早期治療につなげたいという思いです。

短期間での開業に向けてどのように情報を集めたのでしょうか。

北村院長:主に2つのルートですね。1つはドクターズチャートさんで、X(旧・Twitter)で知った開業医向けのコミュニティです。ここでの先輩の先生方の情報、お近づきになった玄先生(すみだブレインハートクリニック院長)の存在は特に大きかったです。

もう1つは、勤務医時代の先輩が承継したクリニックの手伝いをさせていただいたことです。こちらのクリニックは、ちょうど紙カルテから電子カルテを導入し、他にもIT化しようとしていたタイミングだったんです。先輩から頼まれて私自身がさまざまなシステムの設計・選定を担当したときの経験が自分のクリニックづくりに役立ちました。

お手伝いしたクリニックで得た経験をもとに北村先生はペーパーレスを断念しました。なぜでしょうか。

北村院長:「院長の理想をスタッフに押し付けても、おそらくうまくいかない」と学んだからです。じつは、私自身はITが大好きでアップルの新製品発表会に釘づけになり、いろんなガジェットも買って試さずにはいられない性分です。だから理想としていたのは、診察券はスマホ、FAXは紙でなく必要な書類だけPDF、説明書や同意書など患者さん向けの膨大な書類も電子化したいと思っていました。

しかしスタッフや、患者さんに負担がかかり、プレッシャーになるのでは本末転倒です。実際には、ITへの苦手意識を持っている人は、私が予想していた以上に多いのだと知りました。そこで「真の理想」はいったん忘れて、現実的に実装できる範囲でペーパーレス化、IT化を部分的に推進することにしました。

ITリテラシーの高い人を採用しようとは思いませんでしたか。

北村院長:ITに不安のない人が来てくれれば理想ですが、それより大切にしたのは人柄です。選考の際は「経験の長さやスキルは関係ない」とまで伝えました。特にオープニングスタッフの接遇は、患者さんが定着してくれるかどうかに大きな影響を与えると思っていました。患者さんにとって、スタッフのPC操作がうまいかは関係ありません。

電話対応や診察のようすから院長自身が気をつけていることが伝わってきます。

北村院長:実は私の接客、接遇のルーツは、医学生時代のアルバイトにあるんです。「スターバックス」などで4年ほど働いていたのですが、店長には厳しくしごかれました。スタバならではの洗練された接客に好感をもった経験のある方も多いと思いますが、お客様を第一に考える習慣はこの時期に徹底的に植え付けられたように思います。

だから自身がクリニックをオープンする際も「スタバに負けない」とまでは言いませんが、来てくださった患者さんを大切にしてくれるスタッフをそろえることだけは、譲れませんでした。

電子カルテはクラウド型のCLINICSを選びましたね。

北村院長:一番の決め手は先輩方に使っている先生が多かったことです。初期費用が安いことから、オンプレ型ではなくクラウド型にしようと決めました。ただクラウド型では、手厚いサポートが得られないというのはよく聞いていたんです。そこで「わからないことがあったらなんでも質問していいよ」と言ってくださった先輩方に甘えさせていただいています。

玄先生のインタビューでセットをつくるのが大変だったというお話しがありましたが、当院は玄先生のセットを真似させていただき、だいぶ助かりました。

順番待ちシステムでは独自の工夫もされたと聞きました。

北村院長:もとは手伝っていたクリニックで得た気づきで、時間予約と順番待ちを併用することのデメリットが起きていたんです。つまり予約の有無や検査待ちなどで、番号順に呼ばれないことでクレームの原因になっていたので、当院ではスタッフと話し合ってあるアイデアを採用しました。初診は100番台、再診の方は200番台、先に検査が必要なら300番台と、誰が先に呼ばれるのか予測しづらくしたところ、一切クレームはありません。

患者さんにも、もちろんスタッフの生産性にも有効なはずのシステムを入れても満足度が下がるなんて、あまりにももったいないですからね。使い方や設計次第だなと、感じます。

受付内のスペースが広いのも先生のこだわりですね。

北村院長:そうですね。まず24インチのモニターを2枚置いたこと。これは予約システムや電子カルテなど複数のクラウドサービスを使うときの作業効率を上げるために置きました。2画面あれば、表示の切り替え回数が減るので一度慣れるともう戻れません。

もう1つ絶対に欠かせないのがデジタルスキャナです。保険証情報や検査の同意書、検査結果の用紙などたくさんの紙をスキャンして、電子カルテに紐づけて保存しておけば院内の紙はだいぶ減らせます。やむを得ず紙を使っているものも本当は減らしたいのですが…そこは段階を経て一歩ずつ実現したいですね。

患者さんからの評価、手応えはいかがでしょうか。

北村院長:最初は集患が不安でしたが、近くの大病院で消化器系の検査の予約が取れずに困っている方がいることも知っていました。また高齢者が多いと想定していましたが、近隣にはファミリー層が多く、40代前後の来院も順調に伸びています。医療面でもこうした年代に、定期検査をうけてもらうことが開業の狙いでもあったので、この点は嬉しいです。ホームページではマンガを交えて疾患の解説をしているのですが、こうした地道な情報発信によって少しずつ住民の皆さんから信頼していただきたいなと思っています。

これからどのようなクリニックを目指しますか。

北村院長:デジタルの流れに対応して、さらにスマートな診療体制をつくれたらと思っています。たとえばChatGPTのようなAIの精度は向上し続けるでしょう。より正確な検査や診断のためのアプリなども出てくると予測しています。そうした新しいテクノロジーを躊躇なく導入できるクリニックでありたいのです。

新しくてより質の高い医療を提供するためにも、まずは院長が敏感でなくてはいけませんよね。結局は、患者さんのためであり、AIや機械を頼って効率化することで私は患者さんと対話する時間を増やすとか、本質的な医療を提供したいと思っています。

クリニック名 松戸常盤平おなかと胃・大腸カメラと内科のクリニック
院長 北村 英俊先生
所在地 千葉県松戸市常盤平1-8クリエイトSD2階
医院紹介 薬局の2階に2023年開業したばかりの清潔感あるクリニックです。広めの待合室には、院長こだわりのマルチモニターが配置され、患者さんがリラックスして過ごせるよう配慮。内視鏡検査による疾患の早期発見にも力を入れています。